連載 第27回 独断と偏見! 間取り・設備のアドバイス ②玄関
2021.09.22
玄関は、単なる家の出入り口ではありません。
お客様をお迎えする応接の役割も果たす重要な場所です。
だからこそ、玄関には予算をかけてほしいと思います。
新築一戸建てとアパートの違いをいちばん強く感じるのがキッチンと玄関ではないでしょうか。アパートのように玄関が暗くて狭かったり、靴が散乱していたりすると、仕事から帰ってきたときに気持ちが落ち込みませんか?
我が家は延床面積27坪の小さな家です。
しかし、玄関だけは無駄に(?)広くとってあります。最初に図面を見たときは、「もっと狭くていいから、その分リビングを広くしてほしいなぁ」と心の中で思っていました。
でも、設計していただいた納得住宅工房の久保社長にはきちんとした理由がありました。4方向を建物で囲まれた陽あたり最悪の我が家で、唯一視線が抜ける空間があり、それが玄関ホールだったのです。
実際に住んでみて大正解でした。玄関ドアを開けると、正面奥のFIX窓に視線がスコーンと抜けていくので、開放的な気分になれます。
床は600角の大判タイルで高級感があり、上がり框の白い大理石とイタリア製の赤いリビングドアが織りなすラグジュアリーな空間に、ゲストの誰もが歓声をあげます。天井まで届く大容量のシューズクローゼットも死角に入って見えないので、生活感が全くありません。
新築から7年経った今でも、帰ってくるたびにワクワクする、私にとっていちばんのお気に入りスペースです。これから新築される方は、玄関を入ったときの第一印象を良くするためにも、正面奥に大きな窓を設けて、坪庭のシンボルツリーやオブジェなどが見えるといいですね。
収納スペースも多めに確保しましょう。コートやスーツなどの上着専用のクローゼットや、子どものランドセルなどをしまえるお支度コーナーがあると、わざわざ2階から持ち運んでくる手間が省けます。
最近は、玄関にモルタル仕上げのカッコいい土間を採用する家も増えてきました。自転車やガーデニンググッズなど、土がついたものでも気にせず置いておけて、しかも絵になりますね。
また、玄関ホールのどこかにニッチがあると、車や家のキーを置けたり、お花や写真を飾ったりできて、空間のワンポイントになります。
さらに、造作のベンチがあれば、ブーツを履くときにラクですし、おじいちゃん、おばあちゃんが来たときにも重宝します。
コロナ禍を機に、手洗いコーナーをつくるご家庭が増え、もはやスタンダードになりつつあります。玄関を入って、見える場所に設置せざるを得ない場合は、デザイン、質感、照明までこだわった「見せる洗面台」にしましょう。玄関ホールが美しいと、家全体の雰囲気が変わります。
text. 木村 大作
毎年200邸、累計3,000邸以上の住まいを取材する住宅ジャーナリスト。2014年、納得住宅工房で自邸を新築。著書に「失敗しない家づくりの法則」がある。浜松市在住
