COLUMN

連載 第22回 お金をかける優先順位  ③断熱・気密(後編)

2021.08.11

パッシブデザインとは、光や風といった自然エネルギーを上手に取り込み、森の中にいるような本質的な心地よさを生み出す設計手法です。
ひと昔前の日本の住宅には、全館空調や地熱利用の換気システムといったハイブリッドな機械設備は必要ありませんでした。
そうは言っても、現代人の忙しい生活や温暖化が進む今の地球環境を考えると、機械の力なしにストレスフリーで生活するのは難しいでしょう。

最近の全館空調や床下エアコンは燃費が良く、環境に与える負荷も少なくて、コスパも優れています。なので、こんな文明の利器を使わずに我慢して暮らすのは逆に不自然とも言えます。
これからの家創りは、そんな機械設備を否定するのではなく、自然の恵みを活かすパッシブデザインとともに取り入れ、共存させていくこと。
つまり、機械に「依存」するのではなく、「利用」することが求められます。

では、機械の力を利用しつつ、省エネも実現させながら、暑さ・寒さによるストレスのない住環境を手に入れるにはどうしたらいいのでしょう?

基礎コンクリートから壁、屋根を含む家全体を隙間なく「断熱」するのです。
さらに、構造材、断熱材、外装下地材、内装材などに、湿気を吸ったり吐いたりしてくれる自然素材を多用します。こうすることで、室内の温度を一定に保ちながら、湿気が多いときは外に逃し、足りないときは補うという「調湿」を自然の力で行えます。

ただ、どんなに高性能な断熱材を使っても、隙間があっては意味がありません。「断熱」は「気密」とセットで考えるのが基本です。気密はダウンジャケットのファスナーとお考えください。取り込んだ太陽の熱をしっかり封じ込めることができれば、室内の「保温力」は格段に上がりますよね。

自然エネルギーを活かしたパッシブデザインに断熱・調湿・気密をプラスし、必要に応じて機械設備の力を少し借りる。そうすれば、過ごしやすい春と秋には室内の温度や湿度を外と同じにすることができるし、真夏と真冬は外気温の影響を受けにくくすることもできます。

家の断熱性を高めるカギは、断熱材選びにあります。多くの住宅会社が使うグラスウールは、あまりお勧めしたくありません。安くて施工しやすいというメリットがある反面、隙間ができやすく断熱性にムラが生じたり、湿気を吸収しやすいので、壁体内で綿が落下し、内部結露によるカビが発生しやすくなるからです。

『納得住宅工房』さんが標準仕様で使うセルロースファイバーは、出荷前の新聞古紙をリサイクルしたエコ素材で、抜群の調湿性を誇ります。壁の中にびっしりと充填されるので、壁体内結露もありません。
しかも、木質繊維の中にたくさんの空気胞があるため、高い吸音性を発揮します。「電車や車の騒音が気になる」「自宅で子どもに思いきりピアノを弾かせてあげたい」、そんな方にもお勧めですよ。
もちろん、我が家もセルローファイバーを採用しています。

どの断熱材を使うにしても、現場での施工がしっかりできていなければ台無し。
それを確認するためにも、構造見学会やモデルハウスに足を運んで、自分の目で確かめてください。

前回も書いた通り、断熱・気密性能が高い家に住むと、健康寿命が延びます。また、家中どこにいても温度差がなくなるため、大きな吹抜けを創っても寒くならず、プランの自由度も広がります。しかも、各居室にエアコンを置く必要がなくなるので、光熱費も節約できますね。

健康に暮らすためには、家の中の温度、湿度、空気質を良好に保つ必要があります。良好な空気質にするためには、家の中と外の空気を入れ替えるための「換気」が大事。気密性の高い家ほど換気が必要になります。最近はさまざまな24時間熱交換換気システムが流通しているので、ネットで調べてみましょう。

家の住み心地を決める「断熱」「調湿」「気密」「換気」、この4本柱を覚えておいてください。

text. 木村 大作

毎年200邸、累計3,000邸以上の住まいを取材する住宅ジャーナリスト。2014年、納得住宅工房で自邸を新築。著書に「失敗しない家づくりの法則」がある。浜松市在住

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