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コロナ禍においても地価があがった注目エリアは?~東京の住宅地地価動向を徹底分析レポート~

2021.06.16

「グローバル都市不動産研究所(以下、同研究所)」では、国土交通省「公示地価」の最新データ(令和3年の地価公示価格)から、新型コロナウイルス感染拡大による東京の地価への影響と、「令和」3年間の住宅地の地価動向について分析しました。

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​​TOPICS①【東京23区の地価動向】コロナ禍でも住宅地地価への影響は軽微

■東京都は住宅地・商業地ともに対前年平均変動率が8年ぶりにマイナス
今年3月に国土交通省が発表した2021(令和3)年の地価公示価格(以下、「公示地価」)によると、東京都は住宅地と商業地ともに、新型コロナウイルス感染拡大の影響で対前年平均変動率(以下、「変動率」)が8年ぶりにマイナスとなりました。発表当時は、全国の地価ナンバーワンの「中央区銀座4丁目」で7.1%下落、「新宿区歌舞伎町2丁目」でも10.3%下落など、衝撃的なニュースが駆け巡りました。しかし、今回の地価の動向を住宅地・商業地の用途別、23区別に詳細に分析してみると、違った様相が見えてきます。

東京23区の公示地価は、住宅地、商業地とも2014年から上昇の一途をたどり、ここ数年、その変動率は商業地で2019年に7.9%、2020年に8.5%、住宅地で2019年に4.8%、2020年に4.6%と高水準で推移してきました。2021年には商業地で2.1%の下落となりましたが、これまで高水準で上昇が続いてきた分、新型コロナウイルスの影響で反動が現れたものと思われます。その一方、住宅地では0.5%の下落に過ぎず、商業地と比べてその影響は軽微であったと言えます【図1、表1】。

図1

表1

さらに、東京都地価調査(毎年7月1日時点の基準地価格調査)の基準地と同一地点である標準地(共通地点)で、前半期(2020年1月1日~7月1日)・後半期(2020年7月1日~2021年1月1日)に分けて変動率をみた場合、東京23区での前半期の変動率は、住宅地で0.6%、商業地で2.1%の下落となりましたが、後半期は住宅地で横ばい、商業地で0.6%の下落にとどまりました【表2】。

表2

前半期は、初めて緊急事態宣言が発出され、ステイホームの徹底や地域間移動に制約がかかるなど経済活動が大きく停滞したこともあり、商業地を中心に大きく下落しましたが、後半期は、経済と感染防止との両立が試みられ、経済活動も相対的に活発化しはじめたことから、横ばいないしは小幅なマイナスにとどまったと言えます。今後の感染状況にもよりますが、現在進められているワクチン接種が各世代へと拡大していけば新型コロナウイルスに対する不安が解消され、経済活動も復活し、地価の下落も一旦は底打ちするものと予測されます。

​​TOPICS②【東京23区別にみた住宅地地価の動向】港区、目黒区でプラスの変動率

次に、東京23区内の住宅地の公示地価の動向を、それぞれの区別にみてみましょう。 これまでの変動率の推移をみると、2014年から2017年にかけては都心3区(千代田区、中央区、港区)が中心となって地価上昇をけん引してきた面がありましたが、2018年になると、港区のほか、文京区、豊島区、北区、荒川区などの都心部の北に位置する区、品川区など臨海部に面した区が上昇しはじめました。その後、都心部に隣接した台東区や墨田区、江東区、新宿区、渋谷区、さらには板橋区、足立区にも波及する状況となりました。 ところが、コロナ禍に見舞われた2021(令和3)年では、変動率がプラスとなったのは0.3%の港区と目黒区の2区のみで、多くの区で下落に転じることになりました【表3】。

表3

この状況を、各区の調査地点ごとに「上昇」、「横ばい」、「下落」となった地点数の構成比でみると、
①「下落」地点で大半を占めているタイプ、②「上昇」と「横ばい」地点で占めているタイプ、③「横ばい」と「下落」地点で大半を占めているタイプに分けることができます【表4】。

表4

①のタイプの区(新宿区、墨田区、江東区、北区、荒川区、板橋区など)の多くは、ここ数年の上昇ピッチが早かった地点もあり、その調整も含めて下落地点が多くなったことが想定されます。

②のタイプの港区と目黒区では、「横ばい」地点が6~7割程度で、「上昇」地点が港区で3割(9地点)、目黒区で4割(14地点)存在しています。この2つの区は、コロナ禍に見舞われた1年であっても、多くの地点で「横ばい」の地価を維持し続け、さらには「上昇」するだけのポテンシャルをもつ地点をいくつも有していることに改めて気づかされます。

③のタイプの千代田区、世田谷区、中野区では、「下落」地点も目立つ一方で、「横ばい」地点の割合も6割近く存在しており(千代田区4地点、世田谷区60地点、中野区16地点)、根強い人気がある地点を有していることが分かります。特殊なところで、足立区は、「横ばい」地点と「下落」地点がほぼ半分ずつ占めますが、「上昇」地点が6地点も存在しているのに驚かされます(これらの特徴はTOPICS③にて詳述)。

TOPICS③【注目エリア】「令和」3年間で地価上昇した東京の住宅地はどこか

調査研究第1弾 「『令和』に向けて地価上昇が期待される注目エリアを発表!」 (https://bit.ly/2U7xGBF)では、2019(平成31=令和元)年の地価上昇率ランキング【表5左】から、上位30位中14地点がランクインした北区、荒川区、足立区の城北・城東地区、山手線新駅「高輪ゲートウェイ」やJR品川車両基地跡地の大規模開発が進みつつある品川・田町エリアを、「令和」に地価上昇が期待される注目エリアと予測しました。

表5

2020(令和2)年のランキング【表5中央】をみると、この流れを引き継いで、品川(1位)、田町(4位)が上位に位置し、北区赤羽(3、13位)、滝野川(8位)、荒川区東日暮里(5位)、町屋(18、21位)、足立区北千住(11位)、綾瀬(17位)が並んでいます。その中で、渋谷区では恵比寿(2、15位)のほかに千駄ヶ谷(14位)、代々木(24位)、新宿区では信濃町(7位)などもランクインしました。オリンピック・メイン会場となる新国立競技場が完成し、周辺エリアに再び注目が集まったのかもしれません。文京区本駒込(6、23位)、本郷(9位)といった東京山手の高級住宅地も前年に続き、手堅くランクインしています。

コロナ禍となった2021(令和3)年のランキング【表5右】では、上位30位中、目黒区が11地点、港区が9地点ランクインしました。目黒区では、高級住宅地として知られる青葉台(9、10位)のほか、目黒(11位、15位、22位)、中目黒(12、28位)、東急東横線沿線の都立大学(13位)、祐天寺(24位)、学芸大学(29位)がランクインしています。港区では、品川(5位)、田町(19位)が引き続きランクインするほか、3Aと呼ばれる赤坂(1、27位)、麻布(3位)、青山(21、25、26位)や、高輪(16位)といった高級住宅地が上位に並んでいます。これらのエリアは、コロナ禍にあって、都心への交通利便性と高い住環境を兼ね備えた立地が改めて評価されたと言えるでしょう。

また、6地点がランクインした足立区では、大学の誘致が進み、若者の評価が高い北千住(4、6、7位)や綾瀬(2位)が並び、城北地区へのコロナ禍においても注目度が引き続き高いことを示しています。

以上の流れを踏まえ、「令和」3年間でみた住宅地価格の上昇率ランキングTOP30は【表6】のとおりです。
渋谷区恵比寿をトップに、港区品川(2位)、田町(3位)が並んでいます。港区・品川区の臨海部への期待度が高いことがうかがえます。高級住宅地の文京区本駒込の次に、北区赤羽(5位)、滝野川(6位)、荒川区東日暮里(7位)、足立区北千住(8位)、綾瀬(9位)が続いています。上位30位中、北区は3地点、荒川区は8地点、足立区は3地点ランクインし、城北・城東地区への注目度が引き続き変わっていないことを示しています。

コロナ禍においては港区の3A(赤坂、麻布、青山)や、目黒区の青葉台、目黒、中目黒などの高級住宅地を再評価する動きもありましたが、コロナ収束後は、都心への近接性と価格の手ごろさを重視する流れへと戻り、港区・品川区の臨海部や、城北・城東地区の住宅地が地価上昇の注目エリアとなる可能性は今も高いとみています。

表6

分析結果統括 ~コロナ禍においても住宅地地価への影響は軽微~

コロナ禍で東京の不動産がどうなるかは衆目の的でした。結果は住宅地・商業地の地価がともに2021年の対前年平均変動率でマイナスとなりました。リーマンショック後の経済立ち直りに呼応して地価は上昇を続けていましたが、コロナ発生でさすがに下落するだろうと予想されていました。しかし、下落率は商業地で2.1%、住宅地では0.5%。これをどう判断するかです。住宅地への影響は軽微だったのです。

コロナ禍になる前の地価上昇は都心3区が牽引してきましたが、2018年には港区と都心部北部や臨海部に面した区での上昇が顕著でした。コロナ禍で多くの区が下落に転じたなかで、港区の変動率はプラスで、高級住宅地の多い目黒区も同様です。そもそも地価の高い住宅地が多いこの2区ではコロナの影響を跳ね返したと言えます。また、この2区に限らず、都心の高級住宅地では購買需要が維持され、地価の上昇が見られているところが少なくありません。

コロナの収束はまだ見えていませんが、今年の後半から来年にかけて正常に向かうであろうという流れのなかで、渋谷区恵比寿、文京区の本駒込や本郷、さらに都心の中央区、港区、品川区の臨海部、城北・城東地区の北区赤羽や滝野川、荒川区東日暮里、足立区千住や綾瀬などは引き続き人気を維持しそうな雰囲気です。都心への交通利便性と高い住環境を兼ね備えた立地が改めて評価された都心・城南地区と、都心への近接性と価格の手ごろさを重視する流れが城北・城東地区がアフターコロナの主役になるかもしれないと言えそうです。
「グローバル都市不動産研究所」とは
東京という都市を分析しその魅力を世界に向けて発信、不動産を核とした新しいサービスの開発等を目的に、明治大学名誉教授・市川宏雄氏を所長に迎え、株式会社グローバル・リンク・マネジメントが2019年1月1日に設立した機関。
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