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コロナ禍でのお家時間が増えたからこそ、起こりうる夫婦トラブルとは?/法律相談連載

2021.10.19

弁護士・熊谷考人さんによる家族を守る法律アドバイス、今回はコロナ禍で増えている、DVや別居など夫婦間のトラブルについて。事態を悪化させないため知っておくべきこととは?

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コロナ禍による外出自粛、リモートワークなどにより、今までになく夫婦が向き合う時間が増えています。それにより、仲良くなったカップルはいいのですが、残念ながら逆パターンも少なからずあるようで…。事態をより深刻にしないようにするにはどうしたらいいのか、弁護士パパ熊谷さんにうかがいました。
MADURO編集部(以下M) コロナ禍が1年以上続く中、DVや別居など、夫婦関係にまつわる悩みが増えていると聞きます。そういった相談は熊谷先生のいらっしゃる法律事務所にも寄せられているのでしょうか。

熊谷氏(以下熊谷 敬称略) いろいろご相談は来ていますよ。夫婦問題を専門にしている事務所ではないので、「目に見えて増えている」ほどではありませんが……。夫婦が一緒にいる時間が長くなったり、逆に仕事内容によってはなかなか会えなくなったりしていますからね。夫婦関係が変わったり、関係そのものを考え直したりするご夫婦が増えていることは事実だと思います。そうした中、別居や離婚に向かうケースもあるわけです。最悪なのがDV(ドメスティック・バイオレンス)ですね。実際、内閣府男女共同参画局によると、配偶者からのDV相談件数は、コロナ禍が本格化した2020年度は約19万件に。2019年度の相談件数の約1・6倍に増えています。

M DVというと「殴る・蹴る」のイメージがありますが、実はそれ以外にもDVにあたる行為があるそうですね。

熊谷 身体的な暴力がダメなのはご存じの通りです。刑法の暴行にあたり、夫婦間であっても処罰の対象になります。それから、心を傷つけるようなモラハラ(モラル・ハラスメント※1)もDVにあたります。内閣府男女共同参画局のサイトでは、大声でどなる、「誰のおかげで生活できるんだ」などと言う、何を言っても無視して口をきかない、人の前でバカにする、大切にしているものをこわしたり捨てたりする、生活費を渡さない、外で働くなと言ったり仕事を辞めさせたりする、なぐるそぶりや物をなげつけるふりをしておどかす、といったこともDVにあたるとしています。

M MADUROパパには少ないでしょうが、昔ながらの男女観、家族観のままの人がついやってしまいがちなものもありますね。改めて気をつけたいと思います。こうしたモラハラに対しては法的にはどういう判断が行われるのでしょうか。

熊谷 モラハラの結果、PTSD(心的外傷後ストレス障害)などになるレベルだと、刑法上の傷害罪として処罰されることもありえます。そこまでいかなくても、離婚を認めるか、親権(※2)をどうするかというところにも影響してきます。例えば夫が別れたくなくても、精神的なDVがあったと認定されれば、別れなきゃいけなくなることもありますし、さらには「親権者としてふさわしくない」という判断にもなりえます。モラハラの程度によっては慰謝料を請求されることもあります。モラハラは法的にも大きく影響するんですよ。

M ちなみに嫁姑関係が悪化して、姑の言動がモラハラとみなされ、離婚が認められることはあるんですか。

熊谷 たまに会う義母の言動自体がDVとみなされることはなかなかありません。ただ、それに対応する夫の対応がまずく、それが積み重なると離婚の理由になってくるでしょうし、夫のリアクションの内容によってはそれが夫によるDVとして認定される可能性もあります。

M DVとは別に、離婚を視野に入れて別居を始めたという話も耳にするようになりました。一方が離婚したくて家を出て、残った方は離婚したくない、そういう場合はどうなるのでしょう。

熊谷 まず、離婚するまでは夫婦であり、夫婦間には扶養義務(※3)がありますから、別居していても婚姻費用(相手や子どもの生活費)を負担する必要があります。いくら払うべきかという目安も、夫と妻の収入に応じて決まっているんですよ。どんなに夫婦仲が悪くても最終的には払わなくてはなりません。ですから、離婚話がこじれないようにするためにも、収入の多い方が婚姻費用をきちんと払っておいて、相手側の感情を悪化させないようにするのがおすすめです。
どのくらい別居すれば離婚できるかを気にする方もいらっしゃいますよね。最近はだいたい3年別居すると、裁判所も離婚を認める傾向にあります。なお、調停には年単位で時間がかかります。それを見越して、別居して1年くらいしたら、離婚に向けた話し合いを裁判所を通じてスタートすることを考えましょう。

M 別れるにしても夫婦を続けるにしても、少しでもいい形にしたいですよね。

熊谷 DVなど良くない状態になってしまうくらいなら、別居を選ぶというのも一つの手ではあります。「何がなんでも家族は一つ屋根の下でいなくてはならない」という昔ながらの価値観にとらわれず、コロナを機に、夫婦間の適切な距離の取り方を考えてみるのもいいかもしれません。


【注釈】
ハラスメント(※1)

様々な形でのいやがらせやいじめのこと。今回取り上げた夫婦間のモラル・ハラスメントのほか、職場などでのセクハラ(セクシャル・ハラスメント。性的な言動によって、仕事上での不利益を与えたり、職場環境を悪化させたりすること)や、マタハラ(マタニティ・ハラスメント。妊娠・出産・育児をきっかけに不利益な扱いをすること)、パワハラ(パワー・ハラスメント。組織内の関係の優位性を利用して、嫌がらせをしたり、苦痛を与えたりすること)なども法的な問題となる可能性がある。

親権(※2)
子どもの監護・教育を行ったり、子どもの財産を管理したりする権限や義務のこと。基本的には父母が親権者となるが、離婚をする場合には父母のうちどちらかを親権者に定めることとなる。どちらが親権者となるか、話し合いで決まらない場合は、家庭裁判所での調停や裁判によって決めることになる。

扶養義務(※3)
民法では、夫婦は同居し、相互に協力する義務があるほか、生活費を分担する義務があると定められている。


中日綜合法律事務所 弁護士
熊谷考人さん

企業案件、相続案件を多く扱う弁護士事務所に所属。プライベートでは4歳の娘さんがいるMADURO世代です。
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