家を建てたい人と家を創ってくれる人を結ぶオンラインマガジン。

「トイレにドアがない !?」リアルなPARISの暮らし事情/iecomi総編集長コラム第1回

2021.10.05

家を建てたい人と家を創ってくれる人を結ぶオンラインマガジン「iecomi」総編集長 稲葉のコラム。リアルなフランス暮らしのエピソードも交えつつ、家創りのこと、暮らしのこと、旅のことetc. ジャンル問わず綴っていきます。

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読者のみなさま、はじめまして。「iecomi」総編集長の稲葉です。今回はコラム初回ということで、少しだけ自己紹介のお時間をいただければと思います。

3年前にフランスから帰国し、現在は賃貸暮らし。引越し経験は国内外合わせて通算20回以上。いつか終の住処に出会えることを夢見るアラフォーです。「フランスで何をされていたんですか?」というご質問をいただくことが多いので、今日はその辺りのお話を。

フランスに渡ったのは31歳を迎えたばかりの夏。全財産はスーツケース1個。十分な生活費もなく、頼れる知り合いもおらず、文化や言葉も分からない。もちろん仕事もなし。そんな状態での渡航でした。

私がフランスに渡った理由は、何かを習得するためでも、仕事のためでも、婚活のためでもありません。ひとことで言うと、自分を生き返らせるため。経緯は長くなるので割愛しますが、渡仏前の私は、まさにドン底。社会復帰すら危ぶまれた状態から強制的に自分を立ち直させるため、単身フランスに渡ったのでした。
最初に住んだエリアはアフリカ系の方たちが多く住むエリア。同じパリ市内にいるはずなのに、自宅の周辺にはアフロ専門美容室やケバブ屋さんなどひと味違う異国情緒が漂い、刺激的なアウェイ感を味わいました。

裸一貫で異国に飛び込んだ私には、前を向く以外にできることはなく、キオスクで買った手帳サイズのPARIS MAPを片手にパリの街をひたすら歩き続けました。縁もゆかりもない国で、何もないゼロからの出発は、毎日が新しい発見の連続。お金はなくても、仕事もなくても、これからどんな未来が描かれていくのか、とにかく楽しみで仕方ありませんでした。
  
とはいえ、待ち受けていたのは、想像以上に過酷な日々。英語が話せれば何とかなるだろうという甘い推測は初日に打ち砕かれ、ようやく見つけたアルバイトで、親指を切断しかけ緊急手術。そして再び失職・・。自分の無力さに涙することも多々ありましたが、たくさんのユーモアや優しさにも助けらました。
  
ちなみに、パリ市内で暮らした4つ目のアパートは、トイレにドアのない13平米の屋根裏部屋で、お家賃760€。エッフェル塔とシャンゼリゼまで歩いて10分の位置にあるセーヌ川添いの7区エリア。高級エリアに住める身分ではなかったものの、とにかく日本人がパリでアパートを探すのは超困難。トイレにドアがなくても、壁と屋根がある。それだけでも十分ありがたい状況でした。
  
基本、パリのアパートにはクーラーはありません。さらに築150年〜200年の建物のため断熱性もなし。夏は地熱が石造りの建物を伝ってじわじわと登ってくるので、屋根裏部屋の暑さのピークは夜中。屋根の勾配に沿った小さな突き出し窓は、空気の入れ替えができる程度で風も通らない。いただきものの扇風機が私の生命線でした。
 
冬の寒さはかなりのもので、部屋の中なのに息が白い。室内でもダウンジャケットとムートンブーツは必須です。郊外の新しい建物ではセントラルヒーティングいう、全館空調を備えたアパートが主流ですが、私のアパートには備わっていませんでした。ちなみに、パリの緯度は北緯48.5度。日本最北端の稚内市(北緯45.4度)よりも北極寄りです。

浴室といえるスペースもなく、トイレの脇に、公衆電話BOX程度の広さのタイル張りのシャワーブースがあるだけ。浴槽もドアもありません。特に冬場のシャワーは水業なみで、お湯を止めた瞬間からガクガク震えるレベル。Amazonで購入した電気毛布が唯一の暖でした。
  
そんな山あり谷ありの生活を続けること5年。パリ同時多発テロや手術をきっかけに日本へ帰国し、現在に至ります。
 
フランスは、何もかも便利で快適な日本と違い不便なこともたくさんありますが、言いたいことを言い、笑いたいときに笑い、自分らしく生きる。そんなフランスの風土がとても心地よく、肩書きやプライドを捨て、自分らしさというアイデンティティーを取り戻す力を与えてくれました。

1人1人の生き方や個性が異なるように、住まいや暮らし方もいろいろなかたちや選択肢があります。いわゆる"普通"という概念や"こうあるべき"という義務感に囚われず、もっと自由に家創りを楽しんでいたただきたい。そのためのきっかけに、iecomi が少しでお役にたてるようでしたら幸いです。
 
不束者ではありますが、これから家を建てるみなさまと家を建てることを生業とするみなさまが、みんなで豊かな未来を築いていけるようなオンラインマガジンに育てていければと思っています。ご質問やご相談はいつでもウェルカム。みなさまと気軽に語り合えるコミュニケーションの場としてコラムを綴っていければと思います。

フランスのエピーソードはまた折をみて。
それでは、また次回。
iecomi総編集長
稲葉紀代

納得住宅工房株式会社初代広報責任者。2000年代に数々のヒットチラシを生み、同社の成長拡大に貢献。2017年にフランスから帰国後、同社に復帰。集客の完全デジタルシフトを実施し、コロナ禍において昨対比140%を達成。現ARKデザインワークス代表取締役社長。 納得住宅工房を始め、全国の工務店の集客支援やWEB戦略のコンサルティングを行う。2021年7月創刊の家を建てたい人と家を創る人を結ぶオンラインマガジン「iecomi (イエコミ) 」総編集長に就任。趣味は海外ひとり旅と創作活動。家創りに携わる傍ら、フラワーアーティストの側面を持つ。
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